こんにちは 治癒処の中野です。今回の症例報告は腰椎の棘突起間への鍼刺激です。
Sさん 50代 女性:カナダ人 主訴は左頸の柱のように凝り固まったコリによる肩の痛みです。
若い頃,帝王切開による大きな古傷(ビキニカット)があり、その傷跡は今でも滲出液が
僅かながら漏れて膿(pus)になっています。
Sさんは3週に1回の割合で来院し、私は来院の度に頸肩の治療と一緒に古傷に鍼刺激を与えていました。
この施術を継続する事3年間。傷跡からの滲出液pus(膿)は殆ど出なくなりました。
しかし、左頸肩のコリの辛さはやっぱり施術から3週間が限界で、それを過ぎると左頸が柱の様に固まってきます。
今回は腰椎棘突起間の詰まりをしっかり鍼刺激すると頸周りのコリが劇的に改善したという報告です。
前回の症例報告でアクマ式腸骨処置を書きましたが、その延長で “骨膜”を狙い撃ちすると今まで不完全だった
棘突起間の鍼刺激による効果はどう変わるか?の発想から試したものです。
Sさんの腰はとにかく硬いです。腰椎の感触を得るためには、先ずは腰回りと脊柱起立筋をしっかり
緩めなければ棘突起間は探せません(触診できません)。
大転子周辺に“新坐骨”のツボを駆使して…なんとか腰椎棘突起を触診出来るようになります。
ここから“ピンポイントを探せ!”が始まります。
腰椎棘突起間が詰まっている人は最初に下半身から上半身へ向かい軽く触診していきます。
そして擦上の途中で指が停まる感じの部位を丁寧に触診して棘突起間を探し当てます。
棘突起の形は患者さんごとに微妙に異なる(特に外国人)ので、特徴を把握するには数多の経験が必要です。
私は若造の頃に特訓した盲牌(麻雀)のお陰で指先の感度が良いのか?何とか探し当てられます。
鍼は画像1のように刺入、刺激します。彼女の場合は腰椎の棘間がかなり詰まっているので1.5インチ#32番の
太鍼を使いました。
太鍼を丁寧にゆっくり刺入していくと…“Oh, dull feel”と声を上げます。鍼は渋るような硬い感じで入ります。
鍼を1本刺入するごとに頸の硬さをチェックしていきます。仙骨~腰椎~胸椎まで10本ほど鍼を入れると
頸、特に左頸の鬼のような硬さが嘘のように緩みました。
“凄ェ~今までにない緩み方!”思わず呟く私。
棘突起間への刺入に1本につき1分以上ほど費やしていてので、その苦労が報われた瞬間でした。
最初は彼女も “Dull feel ”、“heavy heavy” と刺入の響きを訴えていましたが、だんだん寝息のような
ものが聞こえてきました(気持ちよくて寝てしまったようです)。
1.5インチの中国鍼を全て根元まで入れる事で腰椎棘突起間がジワジワ緩んでリラックスできたようです。
今までも腰椎棘突起間に入れるような鍼を打ったりしていましたが、何というか…探し方が不十分だったので
ピンポイントが見つからないとすぐ諦めモードに突入してこの辺りだろ⁉と鍼刺激していました(大いに反省)
治療を終えてSさんに “How feel?” と聞くと “that’s fine ,sore feel’s gone”と嬉しそうな笑顔です。
そして3週間後の予約を取って帰りました。take care~。
考察:腰椎や胸椎の棘突起間の隙間は人によって様々です。私が診ている患者さんは麻痺や難聴や強烈な歪みや
モルヒネが効かない激痛のヒトなど…皆、棘突起間の隙間が僅かしかない患者さんが殆どです。
要は痛みや辛さが長期化して、酷い主訴を持っている患者さんに共通しているのが “棘突起間の詰まり”です。
この“ピンポイント”を探して鍼刺激を加えると従来の処置以上に患者さんの辛さを解消出来ることが分かりました。
次回も面白い症例報告があります。どうぞお楽しみに(笑)。