児童の鍼灸治療 つづきです
症例2 Kちゃん 10歳 女性 主訴:うつ伏せするとお腹が痛い
この子は私が治療してるお母さんの子で、Kちゃんはお母さんの奨めで来院しました。
先ずはお母さんの話になりますが、彼女は4回の出産で、その全てが帝王切開による出産です。
そして彼女の主訴は…並外れた肩、背中の硬さからくる慢性の痛みです。
頭痛薬も毎日欠かせない位ツラいとの事で当院に通院しています。
先ずは…兎にも角にも帝王切開×4回の見事な傷痕の治療です(治療っていうか鍼刺激です)。
切開傷が治った上から更に切開を重ねているので、感じたことのない異様な硬さの傷跡だらけです。
治療の細かい経過は省略しますが…悪戦苦闘しながらも並外れた肩、背中の硬さからくる慢性の痛み
は治療を重ねる度にどんどん緩んでいきます、当然彼女も大満足?です。
で、ある時 “私の娘(小学生)の腹痛も鍼で治せますか?” と質問されました。
良く聞けば虫垂炎の手術痕があるそうです。彼女は自分の手術痕が肩こりを起こしている事を
理解したようで、娘の手術痕と腹痛が関係あるんじゃないか?と思えたようです。
2,3週後、Kちゃんはお母さんと一緒に初来院。
女子で初めての鍼治療なんで、僕みたいなジジイより女性の先生の方が安心だろう。って事で
院の大ベテラン“神田先生”と一緒に治療をします。
頸、脚、腰周り、胸部、腹部に傷跡を丁寧に触診して違和感、異常点を探します。
頸周りと扁桃部、それに虫垂炎手術の傷跡とその周囲の奥に違和感を見つけました。
神田先生“ココですね!それとこの周りからこっちまで皮下の組織が硬くなってます。”
私もチェックすると“そうだね、はい、部長(神田先生)のおっしゃる通りです(笑)”
さすが神田先生、皮下の細いポイントも全て把握しています。
Kちゃんには赤の顔用の鍼で傷跡刺激するよう伝えて任せてしまいました。
神田先生が手術痕に鍼刺激を加えた30分後、Kちゃんは不思議そうな顔で治療室から出てきました。
お母さんが“お腹は?どう?”と確認すると “うつ伏せでも全然痛みが無い”との事です。
この治療より1か月後の先日、Kちゃん2回目の来院。
“お腹…どんな感じ?”と神田先生が尋ねます。
“ちょっと痛い(引っ張られる感じの痛み)時があったけど、殆ど痛くないです。”
“じゃあ今日は残ってる傷の硬い部分を刺激しますね…”
……………………
………。
今回の症例:児童の鍼灸治療は2例とも古傷治療です。治癒力旺盛な若者でも手術痕は身体に結構なダメージを与えるようです。
お子さんが原因不明の痛みや辛さでお困りの方は過去の手術との関連性を疑ってみるってのも選択肢の一つとお伝えしておきます。