筋張った栄養失調のようなコリが見つかったエリア
こんにちは 院長の中野です。本年もたくさんの患者さんから指導を頂きホントにありがとうございました。
私もスタッフも患者さんの多様な症例のお陰で少しずつ成長しております。これからもどうぞよろしくお願いいたします。
12月は細々した野暮用に追われ、臨床報告が書けなかったので、最近の印象に残った臨床報告をアップします。みなさんのセルフケアに役立つ?かもしれません。
10月、激痛五十肩:クルマ好き(特にフェラーリ)の社長(50歳)が来院。主訴は左肩の慢性疼痛で夜も眠れない激痛が何日も続いている。医者が処方した痛み止めも効かず、激痛から解放されたくて色んな薬を飲みすぎて胃までおかしくなったと言う。左腕を少し動かすだけでも激痛モードに入るらしい。最近買ったNSXをホンダのテストコースで思いっきり走らせる機会があり、運転中だけは激痛を忘れられた…と左肩を押さえながら語ってくれました(笑)。
さて、治療です。うつ伏せは肩が辛くてできないのでベッドに座ってもらい背部をチェック。背骨の左側の筋肉群は右に比べて硬いが痛みはあまり無い。左肩甲骨筋肉はかなり筋張っているが押しても通常の痛さらしい。頸は左後頭部付着部にかなり大きく硬いコリ有り(多分ココを緩めれば痛みは取れるハズ)。仰向けでお腹をチェックすると…どこもかしこも硬くて痛い。
先ずは薬による胃と肝臓のダメージケアです。足の脛の硬くて張ってる所、左右3箇所ずつ鍼刺激と灸、右肋骨下部の肝臓反応点を指標にしてココが柔らかくなる右足内側と肘周りのツボにも鍼刺激と灸。お腹の張りが弛緩してきたので頸の後ろ(特に左側)をチェックするとココも弛緩したので“腕を動かしてみてください”と注文すると “痛てて!駄目です” ってな具合。
今度は左の脇腹の硬い筋をしっかり押圧して “もう一度腕、お願いします”⇒“痛っ!やっぱ無理です”。 左後頭部のコリが酷い所を押圧しながら “もう一度お願いします”⇒“あぁ痛い、痛みが取れません…” 。他にも何か所か関連づくツボや経絡(ツボの流れ)の異常点を試したが、まるで改善しません。(えぇ~何で??頸は緩んでるのに…?)
今までの手法で全く変化無いので、私は少し困惑しながら(いっや~マジか?どうしよう?)痛む肩を細かく丁寧にチェックする事にしました。痛みの走り方や違和感を感じるエリア、筋の緊張具合などを触って具合を聞きながら調べていくと、肩の緊張と疼痛部の他に肘内側と手のひらに物凄く硬いコリと激痛エリアがある事が解りました。
肘内側のコリ(触ると痛い)を軽く10秒位マッサージしてから激痛肩(触れるダケで痛い)を触診すると…痛む程度が変化してます(おぉ?!これか?)。5分鍼(全長約2.5cm)を肘の硬くて痛い6箇所に刺入。“腕を動かしてみてください”。
患者さんは恐る恐るゆっくりと…“動きます!でも痛みは有ります” 痛みは3割位減って少し動かせたようです。
肘の筋張った強烈なコリを緩めると左肩の痛みが減る事が解ったので、手のひら(手根部)の丹念にマッサージします。手根部の親指側の奥にゴリゴリのコリを発見。当然患者さんは痛がりますが10分程我慢してもらいました。手根部のコリが柔らかくなってきたので 肘の筋張りをチェックすると筋の表面が緩んでます(筋の中心部はまだ硬い)。この状態で“腕を動かしてみてください”。“痛みは半分くらいですが動かせる範囲がだいぶ良いです”。
本日はこれで終了です。2日後の予約を取ってもらい治療を終えました。
2日後に来院。治療当日はもう治ったと思うくらい楽で…ぐっすり寝れそうだったが、寝返りしたら肩を捻ってから激痛が再発してしまったとトホホな顔で言う
今回は肘の筋コリを更に柔らかくすれば治癒に近づくと思い、前回同様、手根部のマッサージから始めました。お腹を緩めて、頸を緩めて…さあどうだ?ってな感じで腕を動かしてもらうと “痛み半分で肩の可動域も前回終了時と同じようです” と…期待してたような効果が出ませんでした。
・肘のスジ…??? 以前私が治療してた “もっと早く出逢いたかった患者さん” が、違った症状で同じような肘の持ち主だったのを思い出して肩甲骨をチェックする事にしました。肩甲骨の筋肉を細かくチェックすると…弾力が無く、血行か乏しい栄養失調状態の肩甲骨でした。これはイカンぞ!って事でキズ治療用5分鍼をスジ張って硬く痛い部位10箇所に刺入。10分間静置してから鍼を抜き、肘のスジをチェックすると…スジが明らかに柔らかくなってます(これだ!これだ!)。肘の張りが減少したので患者さんの肩の痛みも更に半減。痛かった最初の肩の痛みを10とすると現在の痛みは2.5になったのでうつ伏せが出来るようになりました。
うつ伏せでコリの強い左側を中心に腰、背中、肩、頸を鍼刺激で緩め、最後に肩甲骨上の筋肉を抜罐治療(吸い玉)しました。抜罐して10分後にカップを外すと 見事な紫色の吸い痕が残りました(物凄い血行不良です)。肘の突っ張り具合と筋の張りは更に改善して押圧しても痛みはありません。激痛五十肩の痛みは、腕を捻ってもほとんど感じず(患者さんは眠れそうだと安堵の顔をしてます)可動域が制限されるのが残りました。後日痛みがぶり返さなければ運動制限解消の五十肩治療を施していきます。
この症例を診て:運動制限のある五十肩はよく治療しますが、今回のような眠れない激痛五十肩は初めてでした。優先すべきは痛み除去。眠れないと交感神経過緊張で痛みが増幅されます。またアルコールも交感神経を優位にするので禁止です。
この後、11月(50代:男性)、12月(40代:女性)でも同様の激痛五十肩の患者さんが2名来院されましたが、今回の症例から学んだ処置で上手く激痛を取り除けました。
いつも思うのですが、ホントにいろんな主訴の患者さんが来院されます。そして新手の手こずる患者さんを何とかクリアすると、まるで復習のように同様タイプの別の患者さんが来院されます。 何かに愛されて試練を与えられてるように…。
いつもご愛読いただきありがとうございます。みなさま良いお年をお迎えください。